104.ショーン・Kは今いずこ
2017/03/17
TVの画面であの青々としたそり跡の人物を見掛けなくなってから早や半歳。日本中の自称インテリの人達は、「あの程度のコメントなら俺(私)でも出来るなあ」と思っていたことでしょう。でもまさかたった1時間の聴講で、ハーヴァードだかコロンビアといった合衆国の名門大卒を吹聴していたなんて、誰が考えたでしょう。
個人情報保護法が負に作用したのでしょうか。それとも文科省が大学に金稼ぎを強く促すべく、国立大学の独立法人化を推し進めたからでしょうか。最近やたらと東京大学を筆頭に、「〇〇大学大学院終了」の経歴を目にします。ひと昔前なら、有名大学の大学院はその大学の4年を卒業するか、又は同程度の難関大学を優秀な成績で卒業した人が学ぶ処と思われていました。ところが今や大学院はeverybody is welcomeとのこと。別に学歴偏重者ではなくとも、昨今の学歴無分別(むぶんべつ)の風潮には、首を傾けざるを得ないのではないでしょうか。
先日、或るきちんとした機関の発行している情報誌に、「ワインの世界の宝」の文字を発見して、つい読み進めると、ボルドーの醸造コンクールで優勝したり、フランス農学部門最難関の学校を卒業したり、その他色々な資格を取ったり、世界中多くの国で栽培と醸造をコンサルティングしたり、と忙しい人が出ていました。フランス人やイタリア人が彼を師と仰いで集まって来るそうな。
気になるので、その文章を書いた人にTelしてみました。「貴方はその本人に取材したのですか。」「いえ、資料の受け売りです。」「よく調べてみることをお勧めします。だって、栽培家・醸造家としてこんなきらびやかな経歴なのに本業はソムリエだとありますよ。」
ここで断っておきますが、私は栽培・醸造家がソムリエよりすぐれていると言っているのではないのです。感性ならきっとソムリエの方が上でしょう。人当たりも良いし、社交性に於いても作る方の人はソムリエにはかなわないことでしょう。それでもやっぱり、ワインを作ることと、ソムリエ業は両立しないと強く信じています。どちらかひとつです、極めるべきは。勿論、文章を書いた人に余計なひと言も付け加えました。本人の日本国内での最終学歴を調べて御覧なさい、と。フランス語がどれ程上手になれるかどうかは、それで分る、と。
ディヴィスで勉強したと主張する人を2人知っています。カリフォルニア州立大学ディヴィス校の栽培・醸造学科のことです。恐らく現時点で一番実用的で理論的なワインの大学だと思います。きっと1~2時間聴講の口でしょう。何故と言って、2人ともまともなワイン作りをしていないからです。お分かりですね、教育の成果は現在に現れるのです。