124.「新ワイン法」考察Ⅰ
2017/12/18
いよいよです。国(国税庁)のHPにも明記されていますが、来年(2018年)からワイン製造の法律がガラリと変わります。ポイントは2つあって、先ず外国由来の原料(ワインそのものや濃縮果汁)で作られたワインは従来のように「国産ワイン」を名乗れなくなります。そしてもうひとつ。例え国産のぶどうで作っても、そのぶどうがそのワイナリーのある市町村産でなければ「〇〇ワイン」と地名を冠することが不可となります。試行準備期間のこの2年半の間、私自身多くの同業他社の人々と話をしましたし、いわゆるワイン・ジャーナリズムの取材も沢山受けました。その結果分かったことが幾つかあります。
ワイン・ジャーナリズム及び一般紙経済部の人々の認識は完全に間違っていました。現存する270軒のワイナリーの極く一部だけが影響を受けると勘違いしている人達ばかりだからです。現実は9割以上が上記2項目に抵触しているのにです。実際、同業の人々の顔は一様に真っ青なのですから。ITの発達ゆえにジャーナリストの知識が一元化・一様化され、深い考察がなされなくなった弊害が如実に顕れてしまった感じです。揚げ句は、「例えそうでも、新法ゆえに日本中が正常化されるのだから良いのではないか」と切り返す始末。そうではないのです。小中学生のレベルまでハードルを下げて、論理的に順を追って解説してみましょう。
すぐ量産に入りたがる我が国の国民性にも一因があります。今から53年前、北海道の或る自治体の長が決意して、東欧圏ブルガリアから大量に輸入したワインを町内でビン詰めして「〇〇町ワイン」として世に出したら、当時の「一村一品運動」との相乗効果で空前のブームになりました。日本とブルガリアの貿易に際し、国際流通通貨を持たないブルガリアのワインは信じられない程の安値で手に入ります。それをブームに乗じて高値で売りさばくのですから笑いが止まりません。こんなことはいつかバレるに決まっている、と町政にかかわる人々は考えたに違いありません。その証拠に後付けながら、その町在来の山ぶどうとヨーロッパ品種の交配も始めます。しかし本格的な学術研究には莫大な費用と長い時間がかかりますから、やっつけで数年後には新品種を発表します。気候条件が純粋ヨーロッパ系品種に適していない極寒の地ですから土台無理な話なのですが、一般論で言っても偽装の上塗りは矢張り失敗します。新品種で純粋に作った振りをしながら、実際は中身が輸入ワインのシリーズが出て来ただけの話となります。
問題はその先です。このあたりで国が手を打っておけば大災害にならなかったのにと悔まれますが、依然野放しのままでした。結果、この上記自治体のマネをして大手も中小も日本中の殆どが「国産偽装・輸入ワイン」の手法を踏襲していったのです。ワイナリー改革には大手術が必要となりました。