125.「新ワイン法」考察Ⅱ
2017/12/22
面倒臭いことにはすぐ手を着けないという我が国の行政慣行下、偽装国産ワインの運動は行き着くところまで行った観さえあります。輸入相手国は主に東欧から南米のアルゼンチン・チリへと移行はしますものの、一度始めたらやめられない魔力を持っていたのが、この運動でした。兎に角ぶどうなど作らなくても簡単に儲かる。持ち歩く名刺もOOワイナリーの経営者で格好がよろしい。でもバレたらどうしよう、とは全く考えなかったようです。何と言っても国が黙認という形で応援して呉れているのですから。結果、日本中見渡してもワインにして数百万本分のワインぶどうしか植わっていないのに、年産2億本以上の「国産ワイン」が出廻る事態となりました。味も原産国を映してカベルネ・ソーヴィニョンとシャルドネの味わいのものが大多数です。
私は何も愚痴を言っているのではありません。別に酒の監督官庁である国税庁を恐れて持ち上げる訳ではありませんが、私も日本人です、今回我が国の官僚機構は健全であると実感し、喜んでいます。これで日本のワイン作りは立ち直れる…と。
小中学生レベルの議論に戻りますと、今後自治体系のワイナリーは輸入原料を一切使えないことでしょう。自分達の町の住民と日本全国のファンを今迄散々裏切って来たのですから。更に困ったことに、自分達で交配したとする怪し気な新品種も少しずつ姿を消すことでしょう。その品種単独で作ったワインは不味くて飲めないからです。今まで輸入のもの90%、自前のもの10%位で混合してビン詰めしていた訳ですが、皮肉なことにアルゼンチンやチリ由来のワインは、本格的なワインぶどうが原料ですからとても美味しいのです。同様に甲州100%もマスカット・ベリーA100%も頂けません。甲州には輸入シャルドネ、マスカット・ベリーAには輸入カベルネ・ソーヴィニョンを大量に混入して味直しするのが定法でした。ワイナリーの評判もワインの味も良くなって、原価は信じられない程安い。そんなウマい話は矢張り永久に続くハズもなかったのです。魔法の妙薬(輸入原料のこと)よさらば、という次第です。「ワイン作りはぶどう作りから」。まともな時代の到来です。