135.地名に於ける面白い符合
2018/04/10
我が日本のことがとても好きです。食べる物はきっと世界一美味しいし、基本的に人々は皆心優しくて、気候はやわらかく、何処にでも山や川、海があります。お陰様で私も薩摩川内、東京、小樽、新潟、余市と、人生の過半は海のある処に住みました。港のある町では、よく住吉神社、入船町、山下町等々と、あれっ前の町にもあったなという地名に出会いますが、そんな時何やら気持ちがとても和むから妙な感じです。
さて、ところが迂闊にも今頃になってやっと気付いた地名の不思議が一つあります。朝日町、旭町のことです。私が現在住んでいる余市町、そして至近の仁木町、赤井川村に同様の名の地区があって気付いたのです。地形的に考えて、日本中の殆どの町は真っ平でない限り、お盆の形かお盆を半分に割ったような形をしているのですが、その時「朝日町」なり「旭町」は、一般にその町の西端の丘陵部に位置することが多いようです。この町で一番早く朝日を拝める処ということでしょうか。お盆の底にある市街地から見て、朝日が昇る方向、即ち東方にある丘の上とはならないことが多いのは不思議です。とにかく初物好きで、初日の出を見るために富士山に登る人々の多い国です。何やら早く旭日に当たると、健康にも幸運にも恵まれると信じているのでしょうか。町の東端は、その町で一番遅く朝日(旭日)が当たる計算です。たとえそれが数十秒遅れででもです。
ここからが本題です。ワイン用ぶどうも含め果樹栽培では、朝日の当たる斜面よりは、午後の陽や夕陽の当たる斜面の方が重用(ちょうよう)されます。地温上昇率が高いからです。南西が一番、次に真南、そして西といった具合に農地がランク付けされるのです。そうすると朝日町や旭町は物成りの悪い処となります。農業をしている人ならば結構よく知っているこの真理を、我が余市町では違った言い方で表現します。「あの斜面は雪融けが遅いから、あそこの果物は余り美味しくないよ」と。
生まれは鹿児島ながら、少年期、壮年期、現在の老年期と都合30年程住んだ北海道。かつて幕末にこの地を踏査した松浦武四郎が名付けて「北海道」としたそうですが、さてその命名が良かったのかどうか。彼は単に西海道・東海道の流れで名付けたのでしょう。しかも確かに日本の北の端には在ります。それでも風評被害とでもいうべきでしょうか、とても寒くて、物成りも悪く、冬は雪で閉ざされてといったマイナス・イメージの一因がこの名付けにあるのも事実です。
ところが、現在余市町でフランス系のワインぶどう12品種を育てている私の立場で言いますと、緯度が高い(北緯43度)分だけ5~8月の日照時間は格段に長く、又梅雨や台風に無縁の土地なので晴天日が多いため、果樹の受けるエネルギー量では決して本州に負けません。じゃあ、何という名前が良いのでしょうか。例えば北海道地名群の中の優秀作でもある「空知」と「帯広」をくっ着けて「空広」なんてどうでしょう。例のロケット事業家のイーロン・マスクなら、きっとそうします。
又、このおっさん変なこと言っているなとは言わずに、皆さんもどうぞあれこれ提案してみて下さい。