145.「日本ワイン」の流通を変えよう

2018/12/18

   一年にリリースするワインは5,000本程が上限といわれるロマネ・コンティは別格としても、世に約60万軒あるワイナリー各々の平均的な年間販売本数は数万本だと思われます。別に統計を見るまでもありません。ワイン作りはぶどう作りの原則に照らして、10万本以上作るとなると15~20ha以上の面積が必要となり、農業的に経営がとても難しくなるからです。しかも同じ畑の同じ品種のぶどうから作られたワインでさえ、毎年かなり異なる味わいに仕上るのがワインの宿命です。
  ではそのような自社の製品を、彼らは一体どのようにして売り捌(さば)いているのでしょうか。我が国には世にも希な販売免許制度が近年まであったため、いまだに多くの酒類がメーカー→酒問屋→小売酒店→一般消費者もしくはレストラン飲食店、と流通しています。不思議です。何がと言って、上述の如く同じ味のものは多くて数千本しかないという「希少性」と、毎年味が違うという「独自性」を併せ持つワインという産物を、非常に画一的な流通のシステムに乗せながら販売して来たのです。しかも流通途中の問屋さんや小売酒店さんは殆ど味見もせずに販売します。まるで工業製品の扱いです。
  考えてみれば、今迄「国産ワイン」と称してワイナリーから出荷されていた、我が国の殆どのワインが外国由来のものだった訳ですから、流通の現場もいい加減でよかったのかも知れません。それどころか作りの現場が、悪く言えば偽装品だらけだった訳ですから、流通の世界でワイン作りの真実に興味を持つ人が現れるハズもありません。
  さて、ですから新ワイン法施行に伴い、作りの現場に本物の作り手が次から次と現れて来る今後は、今迄のような売り方ではない売り手が登場するものと思われます。いわゆるネゴシアンです。この語源はフランス語です。自分の目利き(舌利き)で良いワインを一定の大きな量で買い歩き、それを自分の責任で熟成させて、良き顧客(レストランもあれば個人も居ます)に売って利を得るのが、本来のネゴシアン。しかし現代では自分でワイン作りをしながら、他人のワインもネゴシアン的に扱う人さえ居ると聞きます。要するに語義通り、他人の作ったワインを上手に工夫して流通させる職業なのです。
  ワインに「独自性」と「希少性」、そして「地域性」があればこそ、間に立ってワインを目利きしながら動かす存在は必要で、ネゴシアンの出現は大いに期待されます。勿論、現存のソムリエさん達とは似て非なる職業となりましょう。何しろ、自分のふところを強く痛めて、冒険(投資)をするのがネゴシアンなのですから。自分の目利きが間違っていれば、そのワインは売れずに大損をすることになります。ソムリエさんが評価を誤っても一円も損はしませんが、、、。もっと分り易く言えば、同じフランスの「チーズ熟成士」と似た存在となることでしょう。我が日本で、日本独特のネゴシアンが活躍すれば面白いですね。自分の人生を賭けて!御免なさい。ソムリエさん達が人生を賭けていないと言っている訳では決してございませんので。