172.Wahnsinnig

2019/11/09

  ヴァ―ン・ズィニッヒと発音します。ドイツ語の会話によく出て来る表現で、「何をバカな!」とか「そりゃ、むちゃくちゃや!」と、相手をバカにすると言うよりは論外だと議論打切り宣言の時に使います。
  非常に悲しいことながら、今年この余市の町にワインぶどう畑を作ると宣言して入って来た人々の、出来上がりつつある畑を見ての私の正直な感想がこれです。或る人は真北斜面のしかも傾斜のきつい所に苗木を植えてしまいました。トラクターでの管理もその急勾配ゆえ大変でしょうに、よしんば果実が成るようになっても、北斜面での受光不足で良い実は取れません。「良い実からしか良いワインは作れない。」このワイン作り第一条を知らないのでしょうか。
  又或る人は南西向きながら余りにもきつい斜面作りをしているので、お節介ながら直接本人に「もっと傾斜をゆるくしないとトラクターで登れないよ」と助言しました。結果数か月して見に行くと、上の方の土が下の方へ削り下ろされて積み上げられて高くなり、土地の下辺と公道(町道)の落差が10m近くになっています。あらあら、この崖からトラクターが転落したら大事故になってしまう。
  昔、方丈記やら徒然草やら忘れましたが、「先達は在らまほし」という文章を習いました。何でも先人によく尋け、という意味です。きっと100%他人に相談すると自分の独創性が薄れるからイヤなのでしょうか。この町には畑作り・ぶどう作りの達人が沢山居るのに。
  「文芸春秋」の10月号に村上春樹のバイロイト音楽祭紀行の一文が載っていました。ワグナーのマイスタージンガ―の一節にある、”Wahn! Wahn! Ueberall Wahn!”(ヴァーン、ヴァーン、ユーバーアル・ヴァーン。妄想!妄想!すべて妄想!)。Whanは妄想ですが、Wahnsinnはもう一歩進んで錯乱、狂気のこととなり、wahnsinnigはその形容詞です。「無知」の側面は「狂気」とまで言う気はないながらも、、、、。