35.「再びワインの表示ルールのこと」

2015/06/27

 6月18日のNHKニュースで遂に発表されました。政府自民党の重鎮が居並ぶ委員会で決定され、この秋から施行されるワイン表示の新法。内容は大多数の国産ワインメーカーにとって峻烈です。従来のように輸入ワインや輸入濃縮果汁を使ったワインは、表ラベルにその表示が義務付けられ、もう従前のように「国産ワイン」とは名乗れないとのこと。滑稽なことに、今迄出鱈目の象徴だった「国産ワイン」という表現を全廃したとのこと。目出たく国内産のぶどう100%で作られたものだけ「日本ワイン」と名乗ってよろしいとのこと。要するにワイン製造業界の非常に多くのメーカーが、外国産のものを国産と偽っていたということです。
 今回の新法でもう一点目を見張るところは、例えば「札幌ワイン」とする場合、札幌の工場で作られ、札幌産のぶどうが85%以上入っていないといけないということです。ワイン工場のない町でのご当地ワインや、原料ぶどうが殆んど入手出来ない町に立地するワイン工場は地名を表示出来ないという厳しいお達しです。国内ワインメーカーのマーケティング戦略が激変することになります。従来のペテンを止めて、次にどんな胡麻化しの術を編み出そうか、熟慮中の会社が沢山あると思います。それとも廃業しようか、と。
 色々な人によく質問されます。それでも自社の製品の一部だけ本物という会社もあるでしょうに、と。私の答えは、「心理学的に考察しましょう。大どころでウソをやっておいて、一部だけ本物というのは、一種のアリバイ工作で、もっともタチが悪い。きっとその本物にも外国ワインのエキスを入れたくなるのが人情ですよ。」
 それにしても国の新法発表の仕方がとても巧妙でした。日本酒と抱き合わせにしたのです。日本国内で国産米100%で作られたものだけを「日本酒」と呼びます、だからワインもそうしましょう、と。ワインの業界が束になってかかっても、こんな明解な論理はひっくり返せません。そして勿論、世論だって出鱈目なワイン業界の味方はしてくれません。玉虫色の軟着陸は一切ありません、と国が高らかに宣言したのですから、業界は圧力のかけようもありません。アッパレ一本!です。
 日本中のワイン屋さんの殆んどの内情を知っている私としますと、何を今更とアクビの出る思いですが、それでも我が町余市、そして仁木にとっては空前の強い追い風です。日本で一番ワインぶどうを産する町なのですから。
 今後食べるぶどうから作られたと称するワインにも要注意です。人間高級品を指向するとき、決して代用品を原料に用いないからです。