38.「道産ワイン懇」という不思議な組織
2015/07/19
正式には「道産ワイン懇談会」というのだそうです。北海道内でワイン作りをする会社の連絡協議会のようなもので、当初(30年程前?)は名前の通り、単なる親睦団体だったようですが、近年に至っては絶大なる権力を行使するようになりました。北海道内に計26社あるワインのメーカーのうち、群れるのを嫌って加盟していないのは私共OcciGabi Winery以外には数社のみ。
群れると必ずやボスが出現して、あたかも北海道のワインメーカー全体の代表のように振る舞いますが、この道産ワイン懇に於いては道央のA社と道東のB社がそのボス。北海道内のワイン業界や政治まで好きなように仕切って来ました。訳の分からない理屈を並べて消費者を翻弄し続けてきたのです。私の場合、相手が大きいからではなく、余りにも阿保らしいから放っておけというスタンスでやって参りましたが、今回「ワイン表示法」の制定で上記AB2社が完全に打ちのめされることとなりました。痛快至極です。
まず輸入原料(ワインそのものや濃縮果汁)に殆んど頼っているB社は表ラベルに「輸入原料使用」と明記し、「日本ワイン」は名乗れないこととなりました。B社は公共の自治体でありながら今迄国民を偽って来た上に、そのことを自社製品の表ラベルに表記しなさいというのですから、丸で首から罪状のカードを下げた晒し者の感じです。今後一体どうするのでしょうね。ワイン愛好家の信頼回復は出来るのでしょうか。
更にA社に於いては今迄原料がその会社の立地する所のものではないのに、○○ワインと書いて来ましたが、これが禁止されます。それと北海道中の色々な町や村の名前の入ったワインも殆んど禁止されます。原料ぶどうの大半が余市だからです。これはいわゆる「ご当地お土産ワイン」のことです。
このA、B2社のケースは残念ながら現在国内二百数十社の殆んどすべてに当てはまります。該当しないのは多くて20社でしょうか。そしてそれらは小さい会社ばかり。日本のワインの歴史始まって以来の表示ルールの制定で、違反者(社)は製造免許取り上げという非常に厳しい国のお達しです。日本中のワイン会社が大混乱で、連日会議を繰り返しているという私の表現は決して誇張ではありません。業者の自主規制に任せる、良心を信じるという国側の姿勢は見事に裏切られ続けて来たのです。
日本で売られているワインのうち純粋の国産ワインの比率が5~6%(生食ぶどう由来も入れて)というのですから、その比率を増やせば自ずと我が国の貿易収支改善にも繋がります。安く大量にという考えの裏に秘そむ、加工食品の世界のトリックをもう一度考えて見るべきです。国産(?)ワインの世界は輸入原料という麻薬に犯されてきたのですが、是正は何時でも遅すぎることはないのです。
諸悪の根源が大量生産にあります。沢山作った方が良い物が出来るというのは工業製品の話です。ワインのように年ごと、畑ごと、作る人ごとに味の異なる農産加工品に於いて何十万本・何百万本作ること自体が間違いなのです。
新しい表示法に従うと、道産ワイン懇のメンバーの中で大きいワイン会社が6社程「道産」ではなくなりますから、解散ということになるのでしょうか。もっとも筆頭のA社だけは輸入ものは入れていないので「日本ワイン」と名乗れることは申し添えます。
以前にも書きましたが、遠くから原料を運ぶことは、新鮮原料でこそ上質ワインが出来るという観点からもおかしなことです。日本一のワインぶどう産地である余市・仁木地区にワイナリーを沢山作ろうという私の考えの根拠はここにあるのです。
加えて私見を述べますと、大体「○○ワイン」と地名を名乗るワインは安ワインというのが世界の相場です。表ラベルにブルゴーニュ・ワインと大書してあったら、ブルゴーニュのあちこちの余りワインを集めてビンに詰めたことになるのですから。誇りあるワインは固有の名前、例えば創業者の名を名乗るのが一般です。ワインとはそれ程個性的なものなのですから。