41.「輸入原料でワインを作るということ」

2015/07/26

 そもそも何故輸入原料でワインを作るのでしょうか。ズバリ価格ゆえです。ワインぶどうを自社畑で本格的に栽培すると、1本のワインに必要な1㎏のワインぶどうを得るのに最低800円~1000円かかります。フランスの特級畑のように味を追求してより少なく成らせるようにしますと、1㎏はもっともっと高価になります。ブランド力を支えようとすると元のところの原料コストが大きくなる、という当り前の経済法則が働くのです。
 ところが、現在はアルゼンチンかチリからですが、輸入原料の場合、出来上がったワインそのものか、濃縮した果汁で輸入されます。それが720mℓビン1本分が何と7円~10円で現地で調達されているとか。まさか、とお思いでしょう。いえ、本当です。
 国際ディーリング・ルームに居て、円を買った、ドルを売ったというようなことをしていなくとも、割合細かく世界各地を旅行して歩く人なら誰でも知っていることですが、通貨の価値というものにはとても大きな落差があります。日本の1円がアルゼンチンの何ドルに相当するかは当の取り引きをしている人のみが知っているといっても過言ではありません。確実に言えることは、日本の円が世界有数の強い通貨なのに対して、アルゼンチン・ドル(米ドルとは無縁)は10年程前にデフォルト(債務不履行宣言)をしたことにより殆んど無価値だということです。商魂逞しい日本の商社マンがアルゼンチンで原料用ワインを買い付ける値段は、それ故信じられない程安いのです。そのようなワインは海路、200ℓのプラスチック・ワンウェイ容器で日本に運ばれますが、ご想像通り、船賃や中間輸入商社の口銭(マージン)の方がワインその物の価格より高くなりますから、国内ワインメーカーに手渡される時は1本分100円以上になるとか。それを自社内でビンに詰めて、コルクを打って、ラベルを貼って段ボール箱に入れて、営業の人員を使って問屋に卸して、とするのがワインメーカーの仕事。でもほんのちょっぴりぶどう畑は作ります。アリバイ(目くらまし)のためです。