50.ワインツーリズム
2015/09/20
多人数がバスに乗って数あるワイナリーを訪ね歩く。そんな意味でしょうか。それにしても、誰が考え出したのでしょう。客観的には、まだ軒並み訪ね歩く程、完成度の高いワイナリーが集まっている地方は皆無です。ましてや、今回の「表示法」に照らすと、怪し気なワイナリーが数多くあるのですから、ウソとホントを取り混ぜて次々と訪ね歩くことになりかねません。
粗製乱造と申しましょうか。ワイン特区だとか何だとか唱えて、完成度の低い、ワイナリーともよべないような製造所を数だけ揃えて、悦に入る。それらをひっくるめて何時間かで全部訪ね歩こう。
私の知る限り、世界中にそんな「ワイン・ツーリズム」なんて存在しません。元来は1970年代にNapaで幾つかのワイナリーが使用した字句に端を発するものかも知れません。“Winery tour” とか ”Winery visiting tour” とあると、その1軒のワイナリーの畑と蔵の中をずっと案内して呉れるという意味で、決して複数のワイナリーを巡るという意味ではなかったハズですし、現在も、その意で使用されています。勿論その案内(tour)の最後は、徹底的にそのワイナリーのワインを味わう wine tasting となりますから、かなりの時間を要します。その日のうちに次のワイナリーを訪ねるとしても、よく考えて何処に行こうかと決めるのは自分(達)のハズ。当然のことながら、クラスも同等以上のものとなります。お仕着せのごちゃ混ぜツアーとは決してならない道理です。
現在、北海道を真のワイン地帯にしたいのなら、以上のような考察をすべきです。まともで将来性のある、そしてここが一番大事なことですが、ワインの好きな人が、その雰囲気に満足し得るワイナリーをひとつずつきちんと作る。悪貨は良貨を駆逐しますから、いい加減なワイナリー作りが出来ないようにすべき責任は行政にあるのではないでしょうか。そのようにして僅か3~40年という短時日にNapaが出来上ったのですから。
元祖ヨーロッパにはブルゴーニュ、ボルドー、リオハ、トスカーナ等々、古めかしくて時計が止まったような雰囲気のワイン地帯がいくらでもあります。しかしこんな千年以上昔からあるワイナリーを真似て、「汚らしさ」と「伝統ある」を混同させようというトリックは、本当にワインの好きな人には通用しません。先ずスタートはきちんと投資して、清潔で心地良い空間を作ること。これもNapaのすべてのワイナリーが教えて呉れることです。
ワインやチーズを新しい北海道観光の礎石にしよう、と考えるならば、数合わせではなく、まともなものをひとつひとつ、の方式しかありません。この北海道を真のワインランドにして、観光の力強い一助にしようという発想をお持ちなら、まずは先進地をつぶさに視察・研究しましょう。百遍でも申しますが、とにかく一度Napaを見てみましょう。そして二度三度と。通信情報が過多気味で、しかもマユツバが横行する現代だからこそ、百聞よりは一見を実践すべきなのです。
私共はOcciGabi Wineryにいらした方々が、現代ワイナリーの出発点とはこのようなものか、と納得して頂けるようなワイナリー作りをしております。国内でしたら是非一度私共をお訪ねください。国内の他のワイナリーとは丸切り違いますので。